勤続10年以上のベテランのパートタイマーがおり、最初の3年間は昇給をさせていたのですが、その後は他のパートタイマーとのバランスを考慮して、同じ金額のままです。 |
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パートタイマーであっても、正社員と業務の内容、責任の程度、人事異動の有無などが同じである場合には、賃金などでの差別的な取扱いが禁止されます。 |
パートタイム労働法(「短時間社員の雇用管理の改善等に関する法律」)の対象であるパートタイム社員は、1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の社員(正社員など)の1週間の所定労働時間に比べて短い社員とされています。例えば、「パートタイマー」「アルバイト」「臨時社員」など、呼び方は異なっても、この条件に当てはまる社員であれば、パートタイム社員としてパートタイム労働法の対象となります。フルタイムで働く方については、「パート」と呼ばれていてもパートタイム労働法の対象とはなりませんが、これらの方についても、雇用管理にあたってこの法律の趣旨が考慮されるべきであることに留意してください。
パートタイム労働法のポイントは次のとおりです。
1.雇入れの際、労働条件を文書などで確認しましょう。
労働基準法では、社員を雇い入れる際には、労働条件を明示することが事業主に義務付けられていますが(※)、パートタイム労働法では、これらに加えて、「昇給の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」、「相談窓口について」を文書の交付などにより、速やかに、パートタイム社員に明示することが義務化されています(第6条)。
※労働基準法上、特に「契約期間」「仕事をする場所と仕事の内容」「始業・終業の時刻や所定時間外労働の有無、休日・休暇」「賃金」などについては、文書で明示することが義務付けられています。
2.雇い入れ後、待遇の決定に当たって考慮した事項を説明してもらえます。
事業主は、雇い入れ後、パートタイム社員から求められたとき、そのパートタイム社員の待遇を決定するに当たって考慮した事項を説明することが義務付けられています(第13条)。
<説明義務が課される事項>
労働条件の文書交付等、就業規則の作成手続、待遇の差別的取扱い禁止、賃金の決定方法、教育訓練、福利厚生施設、通常の社員への転換を推進するための措置
3.パートタイム社員の待遇はその働きや貢献に応じて決定するよう求められています。
①職務の内容(業務の内容と責任の程度)、②人材活用の仕組みや運用など、③契約期間の3つの要件が通常の社員と同じかどうかにより、賃金、教育訓練、福利厚生などの待遇の取扱いについて規定されています(第9条~第11条)。
また、事業主は「通常の社員と同視すべきパートタイム社員」の待遇を差別的に取り扱うことが禁止されています(第8条)。
4.パートタイム社員から通常の社員へ転換するチャンスがうまれます。
事業主は、通常の社員への転換を推進するため、次のいずれかの措置を講じることが義務付けられています(第12条)。
・通常の社員を募集する場合、その募集内容を既に雇っているパートタイム社員に周知する。
・通常の社員のポストを社内公募する場合、既に雇っているパートタイム社員にも応募する機会を与える。
・パートタイム社員が通常の社員へ転換するための試験制度を設けるなど、転換制度を導入する。
・その他通常の社員への転換を推進するための措置
5.パートタイム社員と事業主の苦情・紛争の解決の仕組みがととのえられました。
事業主がパートタイム社員から苦情の申出を受けたときは、事業所内で自主的な解決を図るように努めなければならなくなりました(第19条)。
また、紛争解決援助の仕組みとして、①都道府県労働局長による助言、指導、勧告、②均衡待遇調停会議による調停が設けられました(第21、22条)。