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労務相談Q&A

労働基準法及び判例等にかかるQ&A

妊娠、出産を理由とする退職勧奨

2015年8月25日
A

先日ある女性社員から、妊娠した旨の報告を受けました。
今までほとんどの女性社員が出産を機に退職しており、また必要最小限の人員で業務を行っている当社にとっては、産前産後の期間の休業や、育児休業等を取得されると、臨時の代替員を確保することが困難な状況もあり業務が回らなくなってしまいます。

女性の就業機会の確保が社会的な要請であることは理解していますが、やはり休まれては業務に支障をきたすことは間違いないので、辞めてもらいたい旨を伝えるつもりです。問題があるでしょうか。

Q

会社は、妊娠したことを理由に退職を勧奨したり、解雇することはできません。

労働基準法では、産前産後休業期間とその後30日間は、女性労働者を解雇することを禁止しています。

さらに、男女雇用機会均等法では、婚姻、妊娠、出産したことや、産前産後休業を取得したこと、妊娠中および出産後の健康管理に関する措置を求めたこと等を理由として、解雇その他の不利益取扱いをしてはならないと定めています。また、妊娠中および出産後一年以内の解雇は、事業主が「妊娠・出産・産前産後休業等による解雇でないこと」を証明しない限り、無効となるとされています。

 女性が仕事を辞めることなく安心して出産することができるよう、「労働基準法」、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(「男女雇用機会均等法」)においては、妊娠・出産を理由とする解雇制限や不利益取扱の禁止等の保護規定が設けられています。


■ 労働基準法

・産前産後の休業(第65条第1項、2項)
6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産を予定している女性は、請求により休業することができます。また、産後8週間を経過しない女性については、本人からの請求がなくても就労させることはできません。ただし、出産後6週間を経過した女性から請求があった場合、医師が支障ないと認めた業務に就業させることは差し支えありません。

・解雇の禁止(第19条)
産前産後の女性が休業している期間中およびその後30日間は、原則として解雇することはできません。

・軽易業務への転換(第65条第3項)
妊娠中の女性から請求があった場合、他の軽易な業務に転換させなければなりません。

・危険有害業務の就業制限(第64条の3)
妊娠中および産後一年を経過しない女性(「妊産婦」)を、重量物を取扱う業務や有害ガスを発散させる場所での業務その他妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせることはできません。

・変形労働時間制の適用、時間外労働、休日労働、深夜業の制限(第66条)
妊産婦から請求があった場合、変形労働時間制がとられていても、1日8時間、1週間40時間を超えて働かせてはいけません。
また、同じく時間外労働、休日労働または深夜業をさせることはできません。


■ 男女雇用機会均等法

・解雇および不利益取扱の禁止(第9条第1項~3項)
女性が婚姻、妊娠、出産したことを理由として退職する旨をあらかじめ就業規則等で定めること、女性が婚姻したことを理由として解雇することは禁止されています。 また、女性が妊娠、出産、産前休業を請求したこと、産前産後の休業をとったこと等を理由として解雇その他の不利益な取扱いをすることは禁止されています。

(不利益な取扱の例)
・解雇すること。
・期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと。
・あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること。
・退職の強要や正社員からパートタイム労働者等への労働契約内容の変更の強要を行うこと。
・降格させること。
・就業環境を害すること。
・不利益な自宅待機を命ずること。
・減給をし、または賞与等において不利益な算定を行うこと。
・昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと。
・不利益な配置の変更を行うこと。
・派遣労働者として就業する者について、派遣先が当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒むこと。
・解雇制限(第9条第4項)
 妊産婦に対してなされた解雇は、妊娠、出産等を理由とする解雇でないことを事業主が証明しなければ無効とされます。
・母性健康管理措置(第12条、13条)

 事業主は、妊娠中・出産後の女性が保健指導・健康診査を受けるために必要な時間を確保することができるようにしなければなりません。また医師等から指導を受けた場合、その指導を守ることができるように、勤務時間の変更や勤務の軽減等の措置を講じなければなりません。