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定年後再雇用の賃金低下が違法とされた判決について

2016年8月5日

定年後に、嘱託従業員として1年契約で再雇用されたトラックの運転手3人が、正社員と同一の仕事なのに賃金に2~3割の格差があるのは違法だと主張していた裁判で、東京地方裁判所は、会社に対し、正社員と同じ賃金の支払いを命じる判決を言い渡し、運送会社側に、嘱託従業員に正社員の賃金規定を適用し、これまでの嘱託の賃金と正社員の賃金の差額の支払いを命じました。

これは、これまでの定年後の再雇用の在り方や判例とは異なる判断です。

これまでの判例では、「再雇用後の賃金が正社員の賃金の6割程度に下がるとしても、我が国の労働市場の現況や、定年退職後の雇用状況に鑑みると、これが公序良俗に違反するとまで認めることは困難である」としたX運輸事件(H22.9.14大阪高裁)のように、再雇用後の賃金減額は違法ではないというのが一般的でした。

しかし、平成25年4月に労働契約法第20条が改正(※)されてから、契約社員やパートタイマーなど非正規雇用の待遇格差をめぐる問題に世間の注目が集まるようになり、「同一労働・同一賃金」の考え方が、世間に広く認知されるようになりました。

安倍首相が今年1月の施政方針演説において、「ニッポン1億総活躍プランで同一労働同一賃金の実現に踏み込む」と発言したことは記憶に新しいことかと思います。

今回の判決では「職務が同一であるにもかかわらず、有期、無期雇用の間に賃金格差を設けることは、特段の事情がない限り不合理だ」「雇用確保のため企業が賃金を引き下げること自体には合理性があるが、財務状況などから今回はその必要性はない」と指摘されましたが、まさにこの流れに沿った判決です。

今回の判決を受けて、運送会社は東京高裁に控訴していますが、高裁でも今回の判決が支持された場合は、高齢者の継続雇用に関して国がおこなっている施策への影響は大きく、再雇用後の賃金減額をおこなっている企業は、再雇用制度の大幅な見直しを迫られることになると思われます。

また、現在、定年後に再雇用されている従業員から同様の訴えが出た場合には、この判決も踏まえながら対応していくことが必要となると思われます。

今後の高齢者の再雇用制度の方向性を占う意味でも、この事件は、今後の展開が注目されます。

 

※「契約社員などの有期雇用労働者の労働条件が、期間の定めがあるという理由により、正社員などの無期雇用労働者の労働条件と相違する場合に、業務内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない」と規定されました。

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