4月には多くの会社で入社される方がいるのではないでしょうか。
その新入社員に伝えておきたい健康保険の給付制度についてご説明します。
健康保険に加入していると、病気や怪我をした時に一定の自己負担だけで病院にかかれるだけでなく、様々な給付の制度があります。
以下、今回は1~3の制度の概要と必要な手続きについてご案内します。(4~6は次回ご案内します)
制度の名称 等 | 概 要 |
1.療養の給付 |
病気や怪我をした時に、一部負担金(3割 等)を支払うことで治療を受けることができる |
2.高額療養費 (限度額認定証の使用) |
入院や手術をした際など、医療費が高額になり病院に支払う |
3.傷病手当金 |
病気や怪我などにより長期に会社を休まなければならなくなった際、 |
4.出産育児一時金 (直接支払制度の利用) |
本人又は扶養家族が出産をした際に一児につき42万円が支給される (出産医院等に直接一時金を支払うことに合意すると、出産費用に充てることも出来ます) |
5.出産手当金 | 産前産後休暇をとった際、その期間の給与が無くなった場合の所得の補償をする (休職前の給与の約2/3が産前6週間、産後8週間分支給される) |
6.埋 葬 料 | 本人又は扶養家族が死亡した際に5万円が支給される |
1.療養の給付
【制度の内容】
病院にかかった際に、健康保険証を提出することで受診できます。
自己負担額は年齢により異なりますが、通常は3割です。
・小学校未満の子 2割
・70歳以上 原則2割(但し、現役並みの所得がある場合は3割負担)
【ポイント】 ◆仕事中や通勤の途中で怪我等をした場合には、健康保険証が使えませんので病院には「労災保険」を使う旨を伝えて治療を受けて下さい。 ◆入社間もなく、まだ健康保険証が手元に無い時に病院にかかりたい場合には一度、医療費の全額(10割)を病院に支払っておき、後日、7割相当額を健康保険の方に請求することができます(「療養費」の申請) |
2.高額療養費(限度額認定証の提示による受診)
【制度の内容】
①高額療養費の申請(後日、健康保険へ申請)
病院にかかった際に支払った自己負担額(通常3割)が高額になった場合に、一定額(自己負担限度額)を超えると超えた分が、後から健康保険より返還されます。
②限度額適用認定証の申請(申請書を病院で提示)
入院や手術により予め医療費が高額になることが見込まれる時は、事前に健康保険に限度額認定証の発行を申請しておき、それを病院の支払いの際に提示すると、自己負担限度額までの支払いで済みます。後日、精算の必要がないので便利です。
■自己負担限度額(暦月ごとに計算します。入院と通院は別に計算をします)
所得区分 | 自己負担限度額 | 多数該当※ |
A.標準報酬月額が83万円以上 | 252,600円 +(総医療費-842,000円)× 1% | 140,100円 |
B.標準報酬月額が53万円~79万円 | 167,400円 +(総医療費-558,000円)× 1% | 93,000円 |
C.標準報酬月額が28万円~50万円 | 80,100円 +(総医療費-267,000円)× 1% | 44,400円 |
D.標準報酬月額が26万円以下 | 57,600円 | 44,400円 |
E.住民税の非課税者 | 35,400円 | 24,600円 |
※多数該当は、高額療養費の申請月以前の直近1年間に、3か月以上高額療養費の支給を受けている場合、4か月目から自己負担額が軽減される措置です。
【手続き】
①高額療養費の申請 ⇒ 「高額療養費 支給申請書」に記入し、健康保険(協会けんぽ等)へ提出
【添付書類】
特になし(原則)
■ケガ等の外傷の場合:「負傷原因届」
■第三者による傷病の場合:「第三者行為による傷病届」
②限度額適用認定証の申請 ⇒「限度額適用認定申請書」に記入し、健康保険(協会けんぽ等)へ提出
【添付書類】
特になし(原則)
※限度額適用認定証の有効期限は最長で1年です。
※ 70歳以上の方は高齢受給者証を提示することで、この認定証の代わりになります(原則)。
但し、現役並みの所得がある場合は、限度額適用認定証(自宅宛郵送)が交付されます。
協会けんぽの申請書はこちら→ 「高額療養費支給申請書」「限度額適用認定申請書」をご利用ください。
3.傷病手当金
【制度の内容】
病気やケガなどで長期に会社を休まなければならず、その期間の給与が支給されない場合、給与額のおよそ2/3の額が健康保険から支給されます。(最初の3日間は支給されず、受給できる期間は受給開始から最長1年6か月です)
要件 |
① 病気や怪我の為、連続して4日以上(会社の公休日も含む)勤務が出来ない状況であること |
【手続きの流れ】
※休業が長期にわたる場合は、1か月位ごとに医師の証明をもらい申請することが一般的です。
【支給の対象となる期間について】
・労務不能とされた最初の3日間は対象となりません
(この3日間は有給休暇を使っても差支えありません)
・支給の対象となった日から最長で1年6ヶ月の期間で、労務不能であった期間が支給の対象となります。
・支給対象期間中で、仕事に復帰できた期間があり、その後再び同じ病気等で休み始めた場合には、その復職していた期間を含めて最長1年6ヶ月です。
【傷病手当金を受給している従業員が退職する場合】
既に傷病手当金を受給している従業員が退職することになった際、以下の全ての条件に該当する場合には、退職後も引き続き傷病手当金を受給することができます。
① 退職日までに、1年以上、健康保険に加入していること ② 資格喪失時(退職日の翌日)において、傷病手当金を受給しているか、又は受ける条件を満たしていること(最初の3日の待機期間を満たしていること) ③ 退職日に出勤していないこと |
協会けんぽの申請書はこちら→ 「傷病手当金支給申請書」をご利用ください。
いずれの制度も給与が支払われなかったり、高額な治療費がかかった時にとても助かる制度です。もし、該当される方がいらしたらぜひご利用ください。
次回は4~6をご案内します。
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