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労務相談Q&A

労働基準法及び判例等にかかるQ&A

退職日前の有給休暇取得

2015年8月25日
A

1か月後に退職する社員から残った年次有給休暇の20日分をまとめて請求されました。しかし、残務処理や事務引継のため出勤を命じ、残りの年次有給休暇を買上げようと思いますが、問題ないでしょうか。

Q

使用者には年次有給休暇を取る時季を変更することができる「時季変更権」が与えられていますが、設問の社員の場合は、退職日までに時季変更をできる日が無ければ時季変更権を行使する余地はないので、法律的には年次有給休暇を認めなくてはなりません。

使用者として残務処理や事務引継が不十分で経営上支障が出るような場合は、その実情を社員に十分に説明し、残った年次有給休暇の一部について、取得を見合わせるよう協力を要請していくことになると思われます。

年次有給休暇の買上げは、社員の心身の休養や活力の養成を図るという年次有給休暇制度の趣旨に反するため、原則として認められません。しかし、社員が退職する際に残した年次有給休暇の未行使分を買い上げることは、退職後には年次有給休暇の権利を行使することができないので、差し支えないものとされます。

なお、例えば、30日後の退職日に対し、残っている40日分の有給休暇を使いたいとの申し出に対しては、退職日以降には有給休暇の行使はできませんので、退職日までに使いきれない日数分については、与える必要はありません。

 年次有給休暇は、その制度の趣旨から、金銭の支給によって代替するということは本質的に
できない性格のものです。したがって、使用者が年次有給休暇の買上げを予約し、労働者に労働基準法第39条に基づく日数を付与しないのは、違法となります。また、休暇権の放棄契約を労使間で結ぶことも無効です。

 ただし、労働者が休暇権を行使せず、その後時効(2年間)等の理由でこれが消滅するような場合、残日数に応じて調整的に金銭の給付をすることは、事前の買上げと異なるので、労働基準法第39条違反とはなりません。

 また、労働者の事情から、年次有給休暇権の行使が行われないまま退職に至り、残余の年次有給休暇について、これを恩恵的に買い上げたとしても同様です。

 しかし、結果的に、年次有給休暇の取得を抑制する効果をもつようになることは、好ましくないと言わざるを得ないでしょう。

 なお、法定日数を超えて、会社が独自に付与している有給休暇日数分については、買い上げても違反とはなりません。