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労務相談Q&A

労働基準法

労働時間とは

2015年8月3日
A

当社の勤務時間は、午前8時から午後5時までと就業規則で定められています。
ただし、作業の準備や朝礼を行うため、始業時刻の30分前には出社するよう指示しています。
この始業前の30分は時間外手当を支払わなければいけないのでしょうか。

Q

労働基準法上の労働時間の解釈は、社員が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。
したがって、労働時間に該当するか否かは、雇用契約や就業規則などで定められた時間だけで判断されるものではなく、社員の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと客観的に判断できるかどうかにより定まるものであると解されています。
一般的には、始業時間前の準備行為等であっても、それが所定労働時間内の労働と密接な関係があり、必要不可欠なものであれば、使用者の指揮命令下に置かれているということで、労働時間に当たると考えられます。
始業30分前に出勤することを義務づけているのであれば、労働時間と考えられますので、その分の時間外手当の支払いは必要になります。

 労働時間について、最高裁判決は、実際に使用者の指揮命令下にある時間という客観的な事実に基づいて労働時間を算定するとし、作業の準備行為も社会通念上で使用者の指揮命令下にあるときには労働時間に算入する必要があると判断しています(最高裁第一小法廷判決 平12.3.9 三菱重工業長崎造船所事件)。
 この事件では、会社が作業服および保護具等の装着を義務づけ、その装着を事業所内の所定の更衣所等で行うと決めている場合、作業服等の装着・更衣所から準備体操場まで移動と、終業時刻後の更衣所への移動・作業服等の脱離に要する時間は、会社の指揮命令下に置かれており、労働基準法上の労働時間に該当するとしています。
 ただし、そうした更衣に要する時間も「社会通念上必要と認められるものである限り」労働時間に当たるとして、一定の限定を付しており、一般の事務職の制服への更衣時間に関して、この判決がどこまで及ぶかは、必ずしも明らかではありません。
 また、これとは別に労働時間について争われた裁判例として、次のようなものがあります。
1. 店員が顧客を待っている間のいわゆる手待時間は、その間特に実作業を行っていなくとも、一般に労働時間に当たるとされる裁判例
(大阪地裁判決 昭56.3.24 すし処「杉」事件)
2. ビル管理会社の社員が管理・警備業務の途中に与えられる夜間の仮眠時間も、仮眠場所が制約されることや、仮眠中も突発事態への対応を義務づけられていることを理由に、労働時間に当たるとする裁判例
(最高裁第一小法廷判決 平14.2.28 大星ビル管理事件)